2015年10月22日木曜日

・「良いアコギのはなし」〜Breedlove ブリードラブギター 詳細レポートpart1 (3本試してみました。動画あり)

「ブリードラブ」(Breed love)  というギターメーカーをご存知でしょうか?

(この記事とは別のモデルも詳細レポートしました。ブリードラブギターパート2はこちらから!



アメリカのオレゴン州に工場がある手工メーカーで、近年日本でも大変評価が高まっています。





最近日本では ヤマハが総代理店になりました。
世界のヤマハが売り出そうとしたメーカーというわけです。




以前、工房にいった店員さんにお話を聞きましたが、

ブリードラブ自体は50人ほどの規模の工場で、事務やデスクワークが15人ほど実際に工場で働いておられる方が 35人ほどのようです。

テイラーやマーチンと言った大規模ファクトリー というよりは フォルヒのような小規模工場と言った感じでしょうか。

各部門に専門の職人がいると言った感じでしょう。



ブリードラブはいままでなんども試奏したことがあります。

マスタークラスと呼ばれる最上級から比較的おてごろな価格のものまでいろいろ弾きましたが どのギターも良い音がします。




はっきりと鳴る(音量が大きい)のが分かります。音色はアメリカンギターよりのワイルドな音ですが、ブリーラブの独特の音色というのがあります。

直線的に音が前に飛び出す感じです。



とくにブリードラブは低音の魅力がすごいのですね。

OM でも十分にでます。新岡さんも同じようにおっしゃっていました。

Cというコンサートサイズのギターではかなり太いです。

さらにそのうえの大きさのA  (オートリディアム) さらに うえにいくとJ(ジャンボ)という大きさがあります。



中古のブリードラブのジャンボ(エドガーハードモデル)を弾いたことがありますが、今現在も含めて 私が今まで弾いた様々なギターの中で最も低音がでるギターでした。







まさにピアノサウンド という感じです。このギターの詳細レポートはいずれアップしますのでお楽しみに。。

6弦のインパクトでいったら、ソモジやグレーベン、マーチンのD28GE などよりも、すごいですね。


低音もそうですが各サイズに魅力があります。


実際の音を聞いてみましょう。(できればイヤホンで大きめの音量で聞いていただけるでしょうか)

OMの芯の太さ レスポンスの良さは他社のOMと比較してもかなり良いです。





スモールジャンボに当たるA(オーディトリアム)というサイズだと箱なりがかなりでます。






その中間のコンサートはちょうどその中間ですね。


低音と高音、全体のバランスがすばらしいですね。






いずれにしろ、直線的な線の太い すばらしい音圧が伝わったでしょうか。。




ギターそのものについて、もっと詳しく見てみましょう。



アコースティックギターマガジンの52号にブリードラブの特集があります。

それによれば ブリードラブはとにかく鳴りを重視しているメーカーのようです。



そのために今までのギターにはなかった革新的なアイディアがたくさん詰め込まれているようです。

例えば、、

・鳴りを良くするためにトップをできるだけ薄くしても トップが膨らまないシステムを組み込んだり、

・弦の振動が効率よくトップに伝わるブリッジを設計したり、

・弦ができるだけストレートにナットを通るようなヘッドを設計したり 

等々。。




ブリードラブのホームページの「特徴」のページは大変興味深いですよ
(こちらをクリック





すこしマニアックなはなしになりますが、、、


このページにある「ブリードラブ・ブリッジトラス」というシステムは大変興味深いですね。

ブリードラブのトップを中心からまっ二つに切断したものです。






アコギにとって一番避けたいトラブルは トップのふくらみです。これはどう頑張ってもリペアのしようがありません。

鳴りの良いギターにするにはトップを薄くしたい(もしくはブレーシングの強度を最低限にしたい)んです。

ソモギとかメリルのギターもかなり薄いですよね。ブレーシングも削っています。




でもそうすると 弦の張力に負けて(アコギではチューニング時に100kg近く張力がかかると言われています)だんだんトップが膨らんできます。


一般的にそれを防ぐメーカーの考え方は二つです。

1 鳴りを重視したいので トップはできるだけ薄いままで(ブレーシングは削って) ネックが起きてくるようにする。

マーチンとかはこの考え方ですよね。ネックをガチガチに接合しなければ トップより先にネックが起きてきます。もちろん ネックが起きるとアコギの音は格段に悪くなりますが、ネックリセット(一旦ネックをとって 接合しなおす)すれば、またもとの良い音が出ます。

ちなみにマーチンで鳴ってないギターはほぼこのネック起きが原因ですね。

2 強度を重視したいので ネックもガチガチに固定し トップも厚めに作る。

ヤマハなど 国産アコギはこの傾向が強いように思います。強度重視です。

ネック起きしないようにガチガチに作ると ボディーは厚めに作らないと変型します。

強度は保たれますが、新品の鳴りはいまいちな感じです。



と、、

今まではほぼこの2つの選択肢だったんですが、ブリードラブは先ほどの写真の「ブリードラブブリッジトラス」という新しいアイディアで、鳴りを重視したまま 強度を保てる設計をしています。

(もちろんメーカーではなく手工家はもっと様々なアイディアを駆使していると思います。)

他にも たくさんのアイディアが詰め込まれているようですよ。(こちらをクリック


最終的にそれらのアイディアが詰まって すばらしい音が出ます。




デザインも個性的ですよね。






モダンですので好みはわかれるかもしれませんが 私は好きです。


今回のパート1では 比較的低価格帯のブリードラブをご紹介しましょう。

(上位モデルはパート2でとりあげます)


低価格帯でも、ギターの造りや音はすばらしいです。

「プレミアシリーズ」「オレゴンシリーズ」は20万前後でかえます。


今は廃盤ですが「アメリカンゴールドシリーズ」もとても良い音がしました。

(ちなみにオレゴンシリーズ以下の値段のモデルは 韓国の工場製でOEMです。

悪くはないですが、作りや材質はかなり落ちますね。。

やはりアメリカのハンドメイドモデルとは雲泥の差です)


装飾は上位モデルに比べ幾らかシンプルですが、音はすごいです。大げさにじゃなくて本当にです。

しっかり調整すると 上位モデルに迫るぐらい本当にいい音がしますよ。



メーカーによれば 材や装飾の違いだけで 同じ設計 しかも 上位モデルと同じように職人がハンドメイドしているとのことです。

違いはサイドの木材を曲げるのが機械か人間かとの事です。

ブレーシングやネックジョイントなどとりわけ音に関わる部分は職人がちゃんとハンドメイドしているのです。。



楽器店の商品説明にも「この価格帯では最高峰」などとよく書かれたりします。


今回は比較的低価格帯のブリードラブ3本を紹介いたいします。

(もう少し高いモデルも試奏しました。ブリードラブギターパート2はこちらから!

まずは、


アメリカでハンドメイドしているシリーズでは 一番リーズナブルな 

「オレゴンシリーズ」を2本試してみました。

まずはこの動画を見ていただけますか?2分くらいです。

英語ですがギター好きなら見てるだけで楽しいです。 

ブリードラブチャンネルのオレゴンシリーズのCMです。プロモーションが上手ですね。




何やら良さそうなギターですね!

オレゴンシリーズは OM(オーケストラモデル)   D(ドレッドノート)    C(コンサート)と三種類のサイズがありますが

今回は C と OM  を試す機会がありました。


まずは C からみて見ましょう



(モバイルの方はクリックするとより高解像度になります)

オレゴンシリーズの「C20  SMY」というモデルです。
(最近マイナーチェンジが行われ、現在の型番ではC26 になるかと思います。)


Cはコンサートサイズ  S はトップのスプルース MY はサイドバックのマートルウッドです。



トップのスプルースもグレードが良いですね。絹のような横筋が入っているのが分かりますでしょうか??


コンサートサイズですので横に厚みがあります。 フォルヒで言うとGくらいだと思います。

でも くびれているのでとても弾きやすいですよ。

メーカのCMにもありましたが、このギターはマートルウッドという珍しい木をサイドバックに使っています。

さまざまな ユニークな木目がでるのが特徴です。

このギターの木目は、、。



















おお! ワイルドですねえ。サイドもかっこいいです。

ちなみにこの個体は 昔アコースティックギターマガジンの試奏のコーナーで取り上げられました。



木目も同じですね。





トップは艶ありですがサイドバックはセミグロス仕上げです。手触りがすごくいいですよ。かなり高級感があります。

このトップ艶ありで サイドバックがつや消しというのは悪くないと思います。

テイラーの400番台や フォルヒの昔の22シリーズでも採用されていましたが、
トップが艶ありなので 深みのある 厚みのある音もでながら つや消しで音量もよくでます。







ブリードラブのオリジナルヘッドです。普通のギターより 弦がナットに向かって できるだけストレートになるように設計されていますね。

ペグは世界のゴトーです。エボニーボタンですね。

SG381 です。

510シリーズより安価ですが やはりゴトーの精度はすばらしいですね。



ゴトーはシャーラーに比べてスムーズです。
フォルヒもゴトーにならないでしょうかねえ。。


実際の音はどうでしょうか??





ブリードラブの公式サイトの動画です。

いい音ですね。

このコンサートのオレゴンは、2015年に なにやら外国のギターディーラーが選ぶ賞も受賞したほどなんです。

右上にディーラーズチョイスアワード とありますね。




アコースティックギターオブザイヤー とあります。

カーオブザイヤーみたいなものでしょうか?笑


いずれにしても これは良い音です。。

倍音は少なめですが、レスポンスがすごく、音が直線的に前に出てくる感じですね。




次にOM のオレゴンを見てみましょう。



OM20 SMY です。

現在は廃番ですが、時々中古がでます。15万以下で出る事がほとんどです。


先ほどよりもくびれが大きくなり、幅が薄くなります。子供や女性にはちょうどいいサイズです。


先ほどのコンサートより、サイドのマートルウッドがかっこいいですね!!


バックはというと、、








これまたワイルドな模様です。かっこいいですね!!一本として同じ木目がないです。


OMでも 低音はでます。設計の良さですね。

ローコードばかりだとコンサートやドレッドのほうが 箱鳴りが強くて 圧倒的に良いと錯覚しがちです。。

もちろん ドレッドの箱なりの迫力には 魅力があります。



でもOM のタイトな低音ときらめく高音も魅力がありますね。プレーン弦をビブラートするとおとが揺れます。

しかも ドレッドよりレスポンスも良いです。


好みの世界ではありますが、ドレッドと同じくらいOM も魅力的な音がしますね。

ギター歴を重ねていくごとにOM などのスモールギターの魅力に気づく方が多いような気がします。新岡さんのタイプBもその系統ですね。



わたしもいまは完全にOM党です。


もう一本ブリードラブのOM を見てみましょう。



アメリカンゴールドシリーズの OM SRH  です。

OM で S (スプルース)R (ローズウッド)です。いわゆる王道の材ですね。


見た目はマーチンコピーですが、細かいデザインがモダンです。


ヘッドはこんな感じです。高級感がありますね。

サイドバックのローズも良いですよ。




ホームページの冒頭の動画と同じギターですね。

これもすごくいい音です。。OM とは思えない音圧ですよ。。

こちらのギターは動画でお楽しみいただきましょう。



生徒のS君にアンディーマッキーの最近の曲を弾いてもらいました。

ぷぷぷというノイズがはいっています、。ごめんなさい。。


(イヤホンかヘッドホンで少し大きめの音で聴いてみてください)






すごい音圧です。。音もきれいに揺れています。

プレーン弦の太さが分かるでしょうか。。






ギターが良いと、ラインの音もとてもいいです。

これは僕がアレンジした、菅野よう子さんの「花は咲く」です。




鼻息が荒くてすみません。。インフルエンザ中に撮ったので。。


(余談ですが、菅野よう子さんはすばらしい作曲家です。。むかしから僕も大好きです。

その菅野よう子さんのアルバムに、これまた私が大好きなピエールベンスーザン(こちらを参照)が参加しているのですね。 つながりがなさそうな二人だったのでびっくりしました。

ついでに 余談の余談ですが、菅野よう子さんの「花は咲く」は311の復興支援ソングですが、ピエールベンスーザンの 「ヒム11」 と言う曲は911を受けてベンスーザンが書いた曲です。

なんとこの ヒム11 の録音もベンスーザンがインフルエンザの時に撮ったもので鼻息がすごいです。


。。 ブリードラブにはなしを戻しましょう。。)






良いピックアップシステムだと ギターの音をそのまま拾います。


以前スタエムでオープニングアクトをさせていただいた時も、ブリードラブで弾きました。





良いギターに良いピックアップは必須ですね。




いずれにしろ、ブリードラブの低価格帯のレベルはすごいです。

OM二本の2ショットです。








じつは 今私の生徒さんの間でプチブリードラブブームです。




先ほど紹介した左側のオレゴンのOM は女性の生徒さんOさんのものです。

初めて買うオール単板のギターでしたが、いろいろ弾かれた結果ブリードラブにされました。

とても良い音&見た目のギターを買われてとても感動しておられます。




別の生徒さんのYさんは、ことし1本良いギターを買おうと思い 国産メーカーの高級機種等も検討されていましたが、たまたま近くの楽器店でオレゴンシリーズのドレッドを試奏し、かなり感動されていました。

手工メーカーのギターをオーダーされた事もあるYさんで、耳もすごくよい方ですが、ブリードラブをたまたま弾いてびっくりされたとの事です。

わたしはいままでブリードラブの事を特に何もお勧めしていませんでしたが、

レッスンの時に急に「先生 ブリードラブって良い音しませんか?? その割に安くないですか?」といわれたのでした。




サウンド的にはフォルヒはレイクウッド系に似たヨーロピアンサウンド

ブリードラブはアメリカンサウンドとカナダ系(ラリビーとか)の中間と言った感じです。

鳴り(音量)はどちらもすごいですよ。。











さて ブリードラブ たくさんのアーティストが使っていますが、ソロギターの世界ではブリードラブを一躍有名にしたのはこの人ですね。



ED GERHARD (エドガーハード)です。先ほどのシグネーチャーモデルの人ですね。

日本でもとてもファンが多いギタリストですね。

ヘンリマンシンニーの ソロギターアレンジアルバムに参加し、グラミー賞を受賞しました。ノミネートではなくて受賞です。すごいですね。




リットミュージックから以前「ソロギターパフォーマンス」という教則DVDがでていましたね。

海外のフィンガーピッキングのギタリストがリットーから教則ものを出すなんてかなり珍しいです。ブリードラブの生音が聞けますよ。





日本で人気が高い証拠ですね。

エドガーハードの大名盤は個人的にはこの一枚目です。録音も演奏も曲もすばらしいすぎです。もしまだ聞いたことない方、これは必聴盤ですよ。itunes で 視聴もできますからぜひ聞いてみてください。




どれもすばらしい曲です。

エドガーハードが最初期から使っているのがブリードラブです。先ほどの教則DVDでも一曲使っていますよ。



彼はソモギのドレッドも所有しています。先ほどのアルバムは ブリードラブとソモギで録音されたようです。





エドガーハードは最近では ブリードラブのドレッドのモデルを使っています。生音をマイク録音した動画です。







トップはアディロン サイドバックはキルテッドサペリです。

イヤホンかヘッドホンで 聞くととても良く鳴っているのが分かりますよ。


私も試奏した事があります。







このモデル自体は70万以上するので まあ良い音がするのは当たり前です。

低価格帯は デザインはシンプルになりますが、同じようにUS工場でのハンドメイドです。

20万前後で メーカにとらわれずに 良いギターをお探しの方にはぜひ試していただきたいですね。

(追記)

サウンドメッセ2015で ブリードラブのブースにお邪魔しました。



かなり広いブースです。ヤマハが本気になって売り出すようですね。

ここでは限定モデルの ハカランダモデルを弾かせていただきました。




この日たくさんの高額ギターを弾きましたが、メーカー製で一番感動したのはこのぎたーでした。

すばらしい設計に 最高の材料で 大げさでなくすごい音でした。

ギター全体 ひいては ヘッドのペグ(糸巻き)をとめている +のねじまで一緒に振動している感じでした。


ブリードラブはヤマハや東京近郊では ドルフィンギターズやハートマンギターズが力をいれていると思います。

ドルフィンギターズ恵比寿です。




ぜひ一度体感してみてくださいね。

(このページに対するご感想やアコースティックギターそのものやアコギ音楽等についてのご質問、ご相談等有れば こちらまで 

忙しいと返信に時間がかかってしまいますが、誠実なご質問にたいしては私に分かる範囲の事であれば喜んでお答えいたします。


また、愛知県尾張地域周辺の方で ギターレッスンにご興味が有る方のレッスンも随時受け付けております。

私個人のレッスンは こちらのページ

江南市のスタジオエムでのレッスンは  こちらのページ


をご参照ください。)




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