2016年11月25日金曜日

・「良いアコギのはなし」その22〜OM(オーケストラモデル)の魅力 おすすめのOMも

アコースティックギターにはいろいろなサイズがありますね。

定番のサイズでいくと小さい方から

O(シングルオー)

OO(ダブルオー)

OOO(トリプルオー)

OM(オーケストラモデル)

D(ドレッド)

J(ジャンボ) といったところです。

最近のメーカーや手工家はもっと多彩なサイズがあります。

特にOM とD の中間サイズ(スモールジャンボや オーディトリアム)は人気があります。





それぞれのサイズにそれぞれの魅力がありますが、一般的に良くあるサイズの中で私が特に魅力を感じるサイズがあります。


それは OM(オーケストラモデル) です。

開発したのは マーチン社で1929年の事といわれています。

実際にカタログに載ったのは1930年です。









オリジナルのMARTIN OM45  (1930)です。




これはインレイが豪華なので、DXです。

材料はアディロンダックスプルースとハカランダ です。




OMは バンジョープレーヤー 「ペリーベクテル」の依頼で作られたものです。

そのせいもあって、ペグがバンジョーのペグですね。


クリスマーチン(マーチンのCEO)が聞いたはなしによると、

「ペリーベクテルがやってきて『バンジョーみたいに弾けるギターを作って欲しい』と言われ、000ギターのショルダーを四角に切り落として14フレットネックにし、指板の幅も狭くしたギターを作った」とのことです。



マーチンでは、そのモデルをビッグ・バンドで使うのだろうと考え、“オーケストラモデル(OM)”と名付けたと言われています。



(ちなみに現代のOOOとOM は、ボディーのサイズは一緒で弦長(スケール)が違います。


OOOは約632mm OM は 約645mm です。

よくOMはOOOの弦長を長くしたものといわれます。

でも、歴史的な流れでいくと、昔のトリプルオーは現在よりももっと小さくて、ジョイントも12フレットでした。

初期のOOOはこんな感じです。




OMの良さを受けて、OOOを弦長はそのまま(632)でOMのサイズにした、しかも14フレットジョイントにした、というのが正しい流れです)










マーチンのOMのビンテージは世界で最も貴重なギターともいわれています。




実際上記のモデルは、以前にオークションにかけられたものですが、8000万ほどからスタートしたとの事。。


このモデルを最近福山雅治さんが購入した事で話題になりました。





オリジナルのOM45です。

右手に注目すると、軽いピッキングでものすごいエネルギーの音です。。

低音の太さもレスポンスもすごいですね。。





冒頭のDXではないですが、これも何千万といわれています。

1929年に世界恐慌が起き、マーチン社もその影響を受けました。

それもあって、この時期に誕生したオリジナルのOM は劇的に本数が少ないのです。

福山さんが持っているOM45 1930 は「19本」といわれています。

冒頭にでてきたOM45DX 1930は「14本」だそうです。





こうなるとただ単にコレクター的な価値だけですごいってことになりそうですが、

このOMというサイズはギターとしての設計が本当にすばらしいと思うのです。

もちろんオリジナルのビンテージの音はべっかくにすごいです。

まさにこれがギター本来の音、ピアノよりもギターが良いと思える楽器です。






でも
現代の各メーカーのOMでも

良い設計で良い材料を使っているOMは素早いレスポンスに太い低音、前に出る太い高音、リバーブ感、残響 音圧 線の太さがあります。


OMといえば
ロングスケール
スモールボディー 
4フレットジョイントが主な特徴ですね。


もちろん冒頭に述べたように各サイズに魅力があるのも事実です。

OOOやOOなど スモールボディーでOMより弦長が短いギターはもっと高音弦の音が太くレスポンスが良いです。唱うように弾けるギターです。

Dは迫力の箱なりがあり ブルーグラスや叩き系には良い気がします。


たくさん買える人はいろんなサイズを買って使い分けると良いですね。




でも1本だけってなると、、トータルバランスでやはりOMの設計はすごいです。

OM と D の中間サイズも悪くはありません。SJやGAなどなど。

ただ、低音も高音もある程度でますが、どちらかというと低音よりになり、どうしても高音が物足りなく感じてしまいます。


それよりもちゃんと設計されたOM で しかもいい材料を使っているものの方が、個人的には圧倒的にバランスが良いと思います。

(もちろん、どんな材料と組み合わせるか、細かい設計をどうするかで、バランスは変わってきます。高級ルシアーものだと少し変わってきますね)







ギターをはじめた頃はドレッドの方が大きい音がでる気がしてよいと思われる方が多い気がします。とくにOMだと低音が物足りなく感じるかもしれません。

なかなか完璧に調整されたギターというのは少ないので、調整がくるった状態だと、ドレッドなどの方がバランスがとれてしまう事もありますが、ばっちり調整された状態だと、OMのすごさがよくわかります。

太い低音に芯のある高音がでます。


前置きが長くなりましたが、
この記事では、私がおすすめの各社のOMについてご紹介しようと思います。

まずは本家マーチンです。

マーチンで一番本数が多いOM はOM28V ですね。







本家マーチンのOMはやはりよいですね。新品なら30万代、中古なら20万円台であるかもしれません。


材料はシトカスプルースとローズウッドです。

ネックの状態が良ければ、確かに良い音ですね。






やはりマーチンのomは素晴らしいです。。



普通はこれで十分です。


しかしさらに上があります。

最近思うのですが、元々設計された時にどんな材料を使って設計したかというのは、非常に大切な要素のような気がします。


その材料で、良い音がでるように設計したのですからね、。


マーチンが同時のOM を完全再現したモデルがあります。

以前このブログでも登場しましたが、
MARTIN オーセンティック OM28 1931 です。










当時のデザイン、製法をマーチンのカスタムショップが可能なかぎり再現したモデルです。

材料はアディロンダック、マダガスカルローズウッドです。



調整された状態のこのギターは、まさに究極の音いった感じです。

これが 本来のOM の音です。。

ドレッドよりOMが良いって思えると思います。


これはぜひ耳の勉強のつもりで勇気を持って試奏していただきたいですね。


新品で100万 中古で70万前後でしょうか。。


ちなみにこれは28シリーズのコピーですが、冒頭にでてきた最高グレード45の完全コピーのモデルもあります。

OM45 DX オーセンティック1930です。

さすがに私も弾いた事がありません。。


値段を見ていただけますか。。




150万? いえ1500万です。。消費税だけで100万ですね笑

すごすぎる。多分 今新品で買えるギターで最高峰でしょう。



このモデルでは ブラジリアンローズを使っています。すごい。。



この値段だと探せばオリジナルもかえそうな気がします。

でも間違いなくこのギターも何十年後、更にすごいことになるんでしょう。


本家マーチンのOMはやはり良いですね。

でも、高いのが難点です。


ビンテージの設計ではありませんが、OMCPA4 のローズはかなり良い印象です。

オーセンティックはなかなかでませんが、このあたりはどうでしょうか?


これは名器です。




マーチンのローレンスジューバーモデルのOMです。

これを弾けば、特にフィンガー系の方はもうドレッドは良いかなって思われるかもしれません。名器中の名器ですね。

別のメーカーのOMはどうでしょうか?


マーチンのコピーではないので、各社それぞれの音色の傾向がありますが、それでも良い設計で低音から高音までバランスよくでるすばらしいOM が幾つかあります。


たとえばLARRIVEE です。

これはOM 09 というモデルです。





マーチンとは全く違うラリビーの音ですが、すばらしい音です。
(ラリビーに付いて詳しくはこちらをどうぞ)

低音から高音までのバランスも良いですね。低音がしっかりでます。


ちゃんとはかってないですが、見た感じマーチンのOMより若干大きく感じます。


ラリビーは年代によってヘッドの付き板やペグなどがいろいろ変わります。

これも良いですね。

材料は シトカスプルースとインディアンローズですが、ラリビーは材料のクオリティーがピカイチですね。


縁取りもメイプルで少しモダンな感じです。




09シリーズ は最高峰の10シリーズより装飾が控えめです。

一応カタログ上の違いは装飾だけですが、個人的に試奏した感じではやはり10シリーズのほうがちょっとクオリティーが高い気がします。

やはり 10は最高ランクなので 材料も職人もとても良いものが使えるのでしょう。

でも09も悪くないですよ。うまく探せば20万前後で中古が見つかります。


OM09では、なかなか良い録音の動画がありません。

10になりますが、ラリビーのOMの音をつかむにはこの動画がおすすめです。

(できればイヤホンか良いスピーカーで 大きめの音で聞いてみてください。)








変則チューニングでのアルペジオですが、すばらしいですね。


ラリビーの音が濁らない、ガラスの音といった感じです。

カポしているのに音圧もすごいですね。


こういう曲調はマーチンよりラリビーの方があります。


安いラリビーのOMも悪くないですよ。

OM-02 やOM-03など。

若干低音が物足りなくなるのですが、比較的安くてOMをという方にはおすすめです。

マホガニーだとOMよりも Lサイズの方が良いので、OMなら OM03 R のローズウッドモデルがおすすめですね。

ちなみにこれはOM-02です。






録音が良いのもありますが、すばらしい音です。

ギターが唱っていますね。


ラリビー以外にもおすすめがあるでしょうか?

あります。





BREEDLOVE のOMです。


これは OM/SRH   というモデルです。


トップはシトカスプルース、





サイドバックはローズウッドです。







デザインもモダンですね。




ブリードラブは特に音圧がすごいです。とくに低音がすごい。。


ちょっとノイズが多くて大変申し訳ないんですが、生徒さんに生音で弾いてもらったこちらの動画をごらんください。





改めてノイズが多くてすみません。

でもスモールボディーから溢れ出る音のエネルギーが分かるでしょうか?

直線的な太いなりを求める人には調整されたブリードラブはかなりおすすめです。


ブリードラブは以前のページで詳しく書いています。

(PART1は こちらから    PART2は こちらから )






ブリードラブはかなりの本数を弾きました。もっと大きいサイズのブリードラブはまさにピアノサウンドという感じで迫力の音圧ですが、弾き比べるとOMも負けていません。


OMの音の良さを知るために、お手数ですがこの2本の動画を聞き比べていただいてもよろしいでしょうか。。

できればイヤホンで 音量かなり大きめでおききください。


1本目はブリードラブのAというサイズです。

いわゆるスモールジャンボです。

ボディーも大きく厚みもあります。



箱なりのふわっとした音圧です。すごく良い音ですね。


ではOMはどうでしょうか?

いま紹介している OM SRH です。





音の違いがお分かりになられたでしょうか??

ふわっとした箱なりが抑えられて音の芯が強く前にでています。レスポンスもすごいです。

プレーン弦の太さがすごいですね。。




大きいギターのほうが音がでる気がしますが、スモールボディーは音がすぐ跳ね返って音が前に飛び出るのですね。

しかも芯のある太い音、弾き手の右手の強弱にすぐ反応するレスポンスです。


スモールジャンボもすごく良いですが、OMの方が応用範囲が広いと思います。




音色の好みもありますが、OMの音にはやはり大きな魅力があります。



元の音がこれだけ良いとラインの音もすごいですよ。




生徒さんにラインで弾いてもらったのがこちらです。





ピックアップはスカイソニックの903です。

ギターの音を忠実に再現するピックアップですが、先ほどのすばらしい音がラインでも健在です。





これはパワフルな鳴りが好きな方にはかなりの名器だったんですが、現在は廃番です。。


アメリカンシリーズもしくは アメリカンゴールドシリーズにOMがありました。

これはたまに中古で10万代ででます。

神戸のヤマハに現時点で新品が一本ありますが、30万近くしますね。。


中古を待った方がオトクかも。。


フォルヒのOMもいいですよ。

例えばこれです。

OM25 AGCT です。

最上級の25シリーズ
アディロントップ
マダガスカルバックです。




高級感が半端ないですね。

ちゃんと設計されているOMはシトカやインドローズでも良い音がでますが、やはりスモールボディーにパンチのあるアディロンと 低音の深みがあるマダガスカルは良いですね。



25のリッチな装飾です。OMですが、マーチン風ではなくモダンなデザインのギターですね。


 マダガスカルの杢目もすごいです。。


今まで見たフォルヒのマダガスカルの中で一番かっこいいかも。。



OMはこの薄さがポイントですね。




究極の素材だとこうなります。


もちろん、レギュラーラインのOMも悪くないですね。

個人的にはOM23CR が 一番好きですね。 多分同じ調整された状態だとレスポンスが良いので体感的には Gよりも鳴っているように感じると思います。


スタジオエムには大体 定番モデルは在庫しているので 試奏してもらいたいですね。


今日は比較的手に入りやすい価格帯のOMを紹介しましたが、ルシアーものでもすばらしいOMがありますね。


値段を無視すれば グレーベンやNGCのOMなどは本家を超える素晴らしい出来です

すでにドレッドなどを持っておられる方はぜひよいOMを試していただきたいですね。



しっかりと調整されたOMは音量不足や低音不足も感じさせませんよ。



また皆さんが良いと思われたギターについてもぜひ教えてください

(このページに対するご感想やアコースティックギターそのものやアコギ音楽等についてのご質問、ご相談等有れば こちらまで 

最近毎日のようにたくさんのご質問やご感想をいただいています。ありがとうございます。

忙しいと返信に時間がかかってしまいますが、誠実なご質問にたいしては私に分かる範囲の事であれば喜んでお答えいたします。


また、愛知県尾張地域周辺の方で ギターレッスンにご興味が有る方のレッスンも随時受け付けております。

私個人のレッスンは こちらのページ

江南市のスタジオエムでのレッスンは  こちらのページ


をご参照ください。)


6 件のコメント:

  1. 先日、ヤフオクでマーチンOOO-18GE 2009年製を入手しました。落札する前にこのブログに出会わなかったことを後悔してます。届いてすぐ軽度の元起きと腹ボテでした。鳴りも今一つ? ブログ中で調整不足のコメントがよくありますが、元起きと腹ボテがどうして鳴りに影響するか理由をブログでお聞かせいただけますか?メンテナンスでよみがえるのであればスタジオMさんに依頼してみようかと思います。今後もいろんな情報を楽しみに読ませていただきます。もうすぐ高齢者より

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    1. いつもこのブログをご覧いただいてありがとうございます!

      ご心情お察しいたします。。


      ネック起きとボディーの膨らみが音にどのように作用するか、一言では言いにくいのですが、

      簡単にいうと ネック起きはネックとボディーとの間での音のロス、膨らみは、サドルを下げなければいけない事による、サドルと弦の角度の変化 が大きいですね。

      もっといろいろあるのですが。


      もしよければ 
      niwahidefumi@gmail.com までご連絡ください。

      詳しく説明した図があります。メンテナンスに関しても立場上ここでは書きにくい本当のところなどもあります。

      良ければご連絡くださいませー

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  2. はじめまして、いつも楽しく読ませていただいています。
    ラリビーのOM-40Rは弾かれた事ありますか?

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    1. コメントありがとうございます。

      OM40-Rは無いですが、OO40R と D40R、それにマホですが、OM40はありますよ。


      ビンテージを意識した設計のラリビーですね


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  3. ご無沙汰しています。
    以前にYAMAHAのサイレントギターをキャンセルしてしまった長谷川ですm(._.)m

    あれから2台目ギターとして、
    小ぶりで弾きやすいギターを楽器屋さんで探していて、
    2台目ギターは10年は弾きたいと考えていたので、ヤイリギターのリペアはとても良心的だと知り、ヤイリのRF-65のカッタウェイエレアコ仕様の購入をほぼ決めて試奏していたところ、
    ふとマーチンのOMCPA4が目に留まり、
    店員さんに弾いてもらったところ、素人ながら音色がとても綺麗に聞こえて、
    購入してしまいました(>_<)
    スペックなどを調べずに衝動買いしてしまった為、これで良かったのかと後悔しつつ帰宅してから色々と検索していた所、
    またまたブログに辿り着きました^^;

    指板が狭くて抑えやすいギターを探して楽器屋さんに行ったのに、、私の様な初心者が指板の広いOMCPA4を弾きこなせるのだろうかと、、
    不安でなりません(>_<)

    でもこちらのブログを拝見して、
    私が魅かれたのは間違ってなかったなぁと少し安心しました。
    ありがとうございます。

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  4. K.YairiのYF-OM-CTMの購入を検討しています。定価なら30万円後半の商品ですが、どうでしょうか。弾き語りに使います。アドバイスを頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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