2020年11月4日水曜日

・「究極のアコギの話」その4〜MARTIN ゴールデンエラの世界〜その1 ミュージアム級の至高のギターたち.. 〜000 OM〜 

アコースティックギターファンにとって、いつの時代もMARTIN は憧れのギターです。


そんなマーチンファンの間で近年圧倒的な人気を誇るのが、ビンテージ仕様のギターですね。


1930年代〜40年台前期にかけてのMARTIN社は、

職人の”技術”も、

使用することができた”木材”も、

ギターの”設計”も

最高潮に達していたと言われています。


それでその時代のギターたちは 

戦前(プリウォー)、戦中(ウォータイム)と呼ばれ、

総称として ”黄金時代”と呼ばれています。


黄金時代= GOLDEN ERA (ゴールデンエラ)ですね!


何を隠そう私もこの時代の設計のギターの大ファンなのです。。


見た目も渋くて最高なのですが、、とりわけアコギファンの心を掴んで離さないのは、その魅力的な(魅惑的な)唯一無二の音色です。


この時代の設計、音があまりに魅力的なので、この時代を意識したギター達が本当にたくさんのブランドによって製作されています。


例えば、

有名メーカー製ですと、”コリングス”や”サンタクルーズ”などはマーチンのビンテージを意識した作りのものが多いですね。特にコリングスは戦前のマーチンに独自の技術を昇華して高い評価を受けたブランドと言われています。


またルシアーギターでも、戦前マーチンを意識したギターがたくさんあります。”メリル”や”ジュリアスボージャス”などは特に評価が高いですね。

個人的には、グレーベンさんや、NGCのギター が大好きです。


お二人とも有名なビンテージマーチンのリペアショップ グルーンギターのリペアマンから出発された方ですね。


そして、もちろん本家マーチンもビンテージ仕様のギターを製作しています。


一般人にも身近なモデルとしてHD-28V OM-28V 000-28ECがあります。市場でも常に根強い人気がありますね!

製作本数もかなり多いので、お持ちの方も多いかもしれません。ビンテージの音を気軽に楽しめます。


さらにビンテージにちかいモデルとしてGE シリーズがあります。

黄金時代= GOLDEN ERA 略してGE と名が付くモデルです。

設計に加えて、木材も当時をできるだけ再現しています。

(ハカランダの使用が近年難しくなっているので、GEの代替版としてマーキスと名がつくモデルも発売されています。ハカランダの代わりにインドローズやマダカスカルローズを使用したモデルです。)

GEまできますと、素晴らしいクオリティーですね。。押尾コータローさんはD28のGEを使用しておられます。


でもさらに上とマーチン社が唱っているモデルがあります。


それはオーセンティック(=本物)と名がつくモデルです。

こちらは、木材もさることながら、製法、詳細デザインまで、かなり細かく当時を再現したものです。(ロッド、塗装、デザインなどなど)

マニアの間ではマーチン社が作る究極のレプリカモデルと呼ばれていますね。



このようにマーチン本家をはじめ、様々なメーカー、製作家がマーチンのゴールデンエラ期のギターをコピーしています。


それだけ、多くのギターファンがこの設計のギターが持つ魅力に取り憑かれているのだと思います。。

中には、100万を超える物も多くありますね。。

究極のギターとして知られているものもたくさんありますね。。

マーチンもオーセンティック(=”本物”)と名の付くギターを製作しています。



でも、厳密に言いますと、、これらのギターはやはり”本物”ではないともいえます。。


やはりレプリカモデルなのですね。。


誤解の無いようにですが、、これらのギターたちは本当に素晴らしいギターたちです。


製作技術も材料も素晴らしいギターたちがたくさんあります。

また独自のアイディアなどを取り入れて、マーチンにない音色を作っている方もおられます。確かに究極と呼べる魅力のあるギターもあります。


それに実際、”本物”のビンテージギターは数も少なく、価値も大変上がっています。

誰もが使える(あるいは買える)ギターではありません。


そう考えると私を含めた一般人には、現実的にはこれらのレプリカの最高峰のギターがビンテージ系の設計では究極なのだと思います。


実際、、オリジナルのビンテージは買えるどころか、お目にかかれることすらほとんどありません。。

私にとっても夢のまた夢のギターたちでした。


「いつかマーチンミュージアムに行けば、いろいろ見られるのだろうか?

でも、マーチンのディラーでもないし弾くことなんてできないだろうな」

そんなふうに思いながら、ビンテージギター特集など記事を、羨ましそうにニヤニヤしながら見ることぐらいでした。


そんないつものようにニヤニヤしてある日、とある方からメールをいただきました。。

そして、、

ついに、、


私にもそんなミュージアム級のギターを弾かせていただく機会が訪れたのです。。




写真のギターは

000-42  1939  

中央

000-45 1942  

OM-28 1933


です。。。正真正銘、、ゴールデンエラ期の”本物”です。。無数のビンテージコピーのお手本になった実物です。。


このクラスのギターは一本だけでも大変貴重ですね。。

でもなんと28、42、45が揃っています。。

000-42に関しては、エリッククラプトンがアンプラグドで使ったのと同じ年です。。



こちらの写真はどうでしょうか?


マーチンファンですと、指板のインレイや、ブリッジピンの色でモデルがわかるかもしれません。



現在のマーチン社でもよく見るデザインですね。

全体のデザインやインレイを見ますと、、

左が HD-28V と 右が D18V でしょうか??

いえいえ

D-28GE と D-18GEでしょうか??


いえ、こちらも本物です。。

左がD-28 1938

右がD-18 1938   です。

世界中のマーチンファンが目にしている、このデザインのギターのお手本となったオリジナルですね。。



これらの素晴らしいギターたちは、長野県某所のとあるギター好きの方の大切なコレクションの一部です。


恐縮ながら私のブログをご覧くださっていたのです。

そして”ぜひうちの眠れるギターを弾いて感想を聞かせてください”とのご連絡をいただいて、今回の試奏が実現いたしました。

本当に、貴重な機会を心より感謝しております!


そしてさらにご親切にも、これらのギターをブログにアップする了解もいただきました。。。本当に本当にありがとうございます。。


今文章を書いている時も思い出して、少し鼻息が荒くなっておりますが、、丁寧にご紹介したいと思います。


今回は第一弾として弾かせていただいたギターの中から、000 OM を中心に当日の様子をレポートしたいと思います。




本当に圧巻のラインアップでした。。



28 42 45 の弾き比べを、まさか本物のビンテージできる日が来るとは思っても見ませんでした。。



そして、後ほど詳しく取り上げますが、これらのギターのコンディションも圧巻だったのです。。


一本ずつ参りましょう!まずは写真右のギターです。

MARTIN OM-28 1933  です。




OM-28 は、とりわけファンが多いモデルですね!

私も大好きなモデルです。。スモールボディーにロングスケールの張りもあり、バランスの良さはピカイチです。何を弾いても合ってしまう使いやすさがあります。

ソロギタリストにも人気のあるサイズですね。


(昔のブログでOMを特集したこともありました。OMの特集記事はこちら


この今では当たり前になっているOMも、マーチン社が発明したものです。


1929年に開発され実際にカタログに掲載されたのは、1930年です。

その後、1933年に生産を終了し、14フレットの000へと移行していきました。

このわずか数年に制作されたオリジナルのOMはとりわけ貴重とされています。


製作本数が極めて少ないのです。。このギターはその最終年のギターです。

世界中に数あるOMギターの元祖ともいえるギターですね。。


OMの元祖としても貴重ですがこのギターは、

14フレットジョイントギターの最初期モデルとしての歴史的な価値も非常に高いと思います。。


現在アコースティックギターの世界では当たり前とされている14フレットジョイントですが、これもマーチン社の発明です。


1929年初の14フレットモデルとして登場したのがこの OM です。


そしてこのOMの良さを受けて、1934以降 ドレッドノート(D)が14フレットに、そしてOOOも14フレットになって行ったといわれています。


それが世界中のギターの常識になったのですね。。


このOM-28 1933 は アコースティックギターの歴史の転換点につくられたこの最初期の14フレットジョイントギターとして、、まさに博物館のギターだと感じました。。


ではこのギターの写真をさらにみてみましょう。


まずトップです。

これから登場するギターに共通するのですが、やはりこの時代のギターがすごいのは材料のグレードです。。


トップはアディロンダックスプルースですが、今では考えられない目の詰まり方です。

あまりにすごくて、一見通常のシトカスプルースと見間違うほどですね。。



素晴らしいトップです。。

デザインもヘリンボーン、ダイヤモンドインレイなど、現在のビンテージコピーのギターでもよく見るものですね。

でもこれがオリジナルです。ここから始まったのですね。。



そしてサイドバックはもちろん!


柾目のハカランダです。。(ちょっとブレ気味で申し訳ありません。。)


でもこれぞ戦前と言えるすごいハカランダですね。この明るい色合いがこの時代特有です。





音は最後にまとめて詳しくお伝えできればと思っております。

でも簡潔に言いますと、今まで弾いたOM-28で一番だと思いました。(当たり前ですが、、)







特に感動しましたのは、すでにこの当時から、あのOM28のサウンド、ボイシングが完成していたということです。


(これは後に出てくる、42 45にも共通しておりました。100年近く前に、それぞれのモデル特有のマーチンサウンドを完成させていたマーチン社に鳥肌さえ立ちました。

今でも世界中のルシアーやメーカーがこれらの音を再現しようとしていること思いますと、当時の職人の技術やセンスも相当だったのだと思います。)



そして設計、材料が今では考えられないグレードという要素はもちろん、

ギター本来のコンディションが素晴らしいというも、見逃せない点でした。


もう一度私が、試奏している写真を見ていただけるでしょうか。。







一見、近年製にも見紛うほど綺麗さです。。

本当に綺麗な状態の良いコンディションでした。


実際お持ちのコレクションは全てEX+++〜MINT ともいえるコンディションでした。数本はタイムマシーンコンディションともいえる状態です。。

このコンディションのものが、世界に何本残っているだろう、、と考えてしまいました。



しかも全てオリジナルの塗装のままで、ノークラックです。


これがすごいんです。。

(多くのギターファンが指摘するとおり再塗装、クラックリペアはやはりオリジナルの音に影響があると思います。

もちろん、天才的な腕のリペアマンがリペアしたギターは素晴らしいですね。芸術的なリペアをする方もおられます。)

歴史的価値として、、
90年近く前の塗装のまま、完全に塗装が一体化して、クラックリペアでボンドやパッチが追加されていないオリジナルのままの音を聞けたというのは、一マーチンファンとして、、かけがいの無い経験でした。

しかもオリジナル塗装なのに、この美しいコンディションでした。。



このOM-28の音の雰囲気を体感されてみたい方は、MARTIN OM-28 オーセンティック1931の試奏をお勧めいたします。

(以前のクロサワ楽器訪問機で詳細レポートしています。)



こちらは1931年当時のレプリカです。


この本家マーチンのOM-28の音の系統、雰囲気を体感していただくのにはとてもいいと思いました。


でも逆に今回、、レプリカでは敵わない、本物の圧倒的な力も見せつけられた感じです。。



各モデルの音の違いや印象などは、まとめて最後に書いてみたいと思っています。




次のギターに参りましょう!

写真左のギターです。。


よく見ていただけるでしょうか。。

コアなマーチンファンでなくても、、どこかで"見覚え"がおありでしょうか。。

あるいは”見覚え”はなくても、ギターファン、ならぬ音楽ファンならきっと”聞き覚え”があるギターだと思います。。






そうです。アコギ史に残る歴史的な名盤、エリッククラプトン 「アンプラグド」でエリッククラプトンが使用したギターです。

1992年のグラミー賞、最優秀アルバムにも選ばれた名盤中の名盤です。

このアルバム以降、90年代のミュージック界は電子音楽からアコースティック音楽へと傾倒していったといわれています。

ギターしだけでなく、音楽史においても燦然と輝くアルバムですね。




無数のアコギファンだけでなく、音楽ファンを虜にし続けるライブアルバムですが、そのライブでメインギターとして使われたのが、000-42 1939 です。



この音の素晴らしさにマーチンギターが再確認され、マーチン社の再ブームにもつながりました。

そしてマーチン社は1995年に000-42 EC を発表します。このビンテージの000-42を再現したアーティストモデルですね。今でも評価の高いモデルです。


続いて発表されたの000-28EC はアーティストモデルながら、マーチンのラインナップで絶大な人気を誇るギターとして、今なお作り続けられています。

すでに22000本が製作されているとのことです。。すごいですね。。

もはやマーチン社を代表する機種となりました。。


そんな無数のマーチンファン、クラプトンファンを虜にするギターですが、、


その本物がこちらです。。





MARTIN 000-42 1939  です。

なんと、、エリッククラプトンと同じ年のギターです。


これを弾く時は流石に鳥肌が立ちました。。







まさに、あの音でした。。感無量ですね。。

この42スタイルのデザインも、現在の40番代でもよくみられるものですが、やはりビンテージの存在感はすごいですね。。

今でもファンの多いスノーフレークインレイです。

当時からのこのデザインセンスに脱帽です。。








こちらもノンクラック、オリジナル塗装のモンスターグレードでした。


その結果もあり、本来の音を確認できたのは、本当に嬉しかったです。。


やはりこのコンディションの000-42は世界的にもあまり無いのではないかなと感じました。。


下の写真をご覧ください。。


トップのアディロンのグレードもやはりすごいですね。。現在では考えられない密度のアディロンです。


ビンテージのアバロンの存在感もすごいです。。新品には出せない、不思議な存在感があります。。でも、30年代のギターとは思えないコンディションです。。




ヘッドのロゴは、横ロゴですね。いわゆるビンテージスタイルのロゴです。

化粧板はハカランダです。



そしてサイドバックは、、





こちらも、圧巻の柾目のハカランダです。


この色合いがやはり30年台特有のように感じます。。オリジナルの塗装が完全に引いて、ビンテージギターの独自の存在感を作り出していますね。。





この時代のハカランダの音を聞きますと、、

やはりどんな代替材も、このクラスのハカランダにはやはり敵わないように思います。

圧倒的なレンジと低音の厚み、音量、高音の煌びやかさ、、そして加工もしやすく、そして息を飲むほど美しい、、

まさにアコースティックギターの理想の材だと思いました。


しかも新品ではない、抜けきったビンテージの音です。。


少し余談なのですが、、アディロンやハカランダに気を取られがちになるのですが、、隠れた名脇役がネックです。写真だと産地は伝わらないのですが、、笑




この時代ですとかなりグレードの良いワンピースのホンジュラスマホガニーネックだと思います。


本物のマホガニーは実際にはホンジュラスかキューバンマホガニーといわれています。それ以外のマホガニーと名のつくものは実際には、姉妹種のようなものかもしれません。。


現在でも一般的なレベルのギターでこのクラスのワンピースネックを使うのはまずありませんね。一部の超高級ルシアーのみだと思います。。

(とあるアメリカのマーチン系のルシアーさんのキューバンマホガニーネックのギターを弾いたことがありますが、これは圧巻でした。。)

この時代のネックはかなり良いものを使用していると思います。


実際にネックをタップするだけで、ボディー全体が深く響くほどのすごい振動でした。

それもあり、実際に演奏してみますと。ネック全体も深く振動し、一体となってギターが3D音響のように響くのです。。

高級スピーカーの持つ深いレンジ感のようなものを感じました。




ネックを3ピース5ピースなど強固に作ったり、あるいはボルトジョイントなどにしているブランドもありますね。


状態も安定しメンテナンス面でもメリットがありますね。でもその反面、音が硬くなったり、「パリッ」としすぎる傾向があるように思います。


最初はわかりやすいので「おっ」と思うのですが、ワンピースマホガニーネックの深いギターらしい音色の方が私はやはり好きなのです。。


特にマーチン系の音ですと、やはりワンピースマホガニーのグレードの良いネックは欠かせないように思いました。

このクラスのワンピースネックで、乾燥しきったものだと安定し音も素晴らしいですね。。


しかもこの1939年のネックの形状はは音も良いといわれ、最近のカスタムでもこの時代のネックの形状が再現されています。


とにかく全てにおいて妥協がない時代のギターのように思いました。


この音はもちろん、先ほどのエリッククラプトンのアンプラグドで聞けますね。



さらに最近では、ギタリストの小倉博和さんが同じ1939の000-42を購入されたことが話題になりました。


このギターを特集したアルバムも発売されています。


かなり近いギターもマーチン社から発売されています。


現在多くのクラプトンモデルが出ていますが、多種多様なモデルがあり、全てがアンプラグドのギターを再現したものではありません。


個人的なおすすめいたしますのは

MARTIN 000-42 オーセンティック1939 です。


クラプトンモデルという名はついていないのですが、まさにこの1939の000-42 を細部まで忠実に再現したものです。






デザインも、細部まで細かく再現されています。音の出方の傾向も近いので、ぜひ一度試奏してみてください!




さて、


これまでの二本だけでも、




素晴らしすぎて十分なのですが、、


マーチンにはさらに上位モデルがありますね。。












この縦ロゴ、、



サイド、バックにまで巻かれた、アバロン、、。











そうです。マーチンの最高峰は45です。




その中でもゴールデンエラ期に作られたオリジナルは神聖視されています。。


写真中央のギターです。







それがこちら 
000-45 (1942)です。





すごい存在感ですね。。

1934年から14フレットの000が生産されるようになりました。


その後1942年までのわずか8年の間に、この14フレットの000−45 はわずか120本程度しか作られていないと言われています。






その最終年1942年のオリジナルです。。

ビンテージの縦ロゴは吸い込まれそうな、存在感があります。

このアバロンの光り方が本当に美しいです。。







トップのアディロンのグレードもやはり圧巻でした。。

今でも、マーチン社では材料のグレードが細かく分類され、45は45グレードと呼ばれる特別な材料が使われると言われています。

前述の2本も圧巻でしたが、とりわけこの45のアディロンの目の詰まり方は、凄かったです。。






こんな目の詰まったアディロン見たことありません。。



やはり45スタイルの装飾は美しいですね。。

ビンテージのアバロンの輝きです。。






やはりこのギターもビンテージギターとして完璧なコンディションでした。。

オリジナルの塗装、クラックもないまま、美しい状態を保っています。

でもビンテージの存在感もある素晴らしい個体です。。



バックのハカランダも見事でした。。



どこから見ても美しいギターです。

サイドのハカランダも、アバロントリムも品がよく、美しいのです。。スノーフレークインレイもいいですね。。



デザインとして、、やはり45の存在感はやはり格別ですね。。

28や42と同じく、マーチンの各モデルのデザインセンスはやはり見事だと思います。

繰り返しになりますが、この当時から洗練されていたデザインを作っていたのは本当にすごいですね。。


45のゴールドペグです。。





私が、45の音の大ファンというのもあるのですが、やはりこのギターの音はとりわけ格別でした。

チューニングの段階でゾックとしてしまいました。。




今回大変貴重な経験となったのは、この戦前期から、28 42 45 の音が作り分けられていることを確認できたことです。

現在のマーチンでも共通する通り、同じ素材、同じサイズのギターでも、それぞれのモデルの出てくる音はまるで違います。

000-28 と 000-45でしたら、現在でも定価で3倍以上の差がありますが、それでも納得してしまう45の圧倒的な音がありますね。


コードを弾いた時に全ての音が美しくとろけるように溶け合い、ギター全体が立体音響のように音を3Dに放出します。そこから湧き上がる深い低音から、女性ボーカルのようにコーラスのかかった美しい高音までの圧倒的なレンジ感は当時からでした。


大変貴重なギターですが、恐れ多くも許可をいただき、トップやバックを叩いてタップトーンなどを詳しく見させていただきました。

そうしますと、、やはり現在に共通する28〜45 の特徴を当時から備えていたのでした。。

つまり音の作り分けは、すでにこの時代からだったのですね。。さすがマーチンです。。







28には28の良さもありますね。早いフレーズ、グルーブでリズムをタイトに刻む場合など音がスパッとタイトに切れた方が良い音楽もあります。

私のようなコードの響きを活かしたいソロギターの場合、深い低音、ベルのような高音、そしてそれを支える美しいハーモニーが一体となってなる倍音のあるギターの魅力というのは圧倒的でした。。

素人代表の私の妻も一緒に音を聞きましたが、ブラインドテストをしても、やはりこの45の持つ圧倒的な深い音色に感動していました。



一通り試奏させていただいた後、やはりこの音が忘れられず、再びこの45に戻ってきました。

いろんな演奏スタイルで45の音が合うかもテストいたしました。


例えば変則チューニングでカポをつけた時など現代的な双方はどうでしょうか。。



近年製のマーチンですと、ハイフレットになると、、という意見もあります。確かに元々伴奏楽器の時代に開発されたギターですので、その意見も一理あるかもしれません。。

でも、この時代のギターはそんなことも感じさせない圧倒的な底力があるように思いました。





旅の宿の夕食です。信州の素材を活かした懐石料理でした。








ギターは料理と同じく、”素材”と”設計”のどちらもよくて本当に最高峰のものになるように思います。

”素材”だけは素晴らしくても、「何か少しピントがずれている」と感じられるようなギターを試奏されたことがおありかもしれません。。


そのような場合”設計”がもしかしたら少しずれているのかもしれません。。


そういうギターに無理やりテンションを上げてタイトに鳴らそうとしても、硬い低音しか出ず、深い重厚な低音、あるいは上に抜け切るような高音がありません。





これまでギター講師を始めてから12年くらいの私の生徒さんや友人の講師やギタリストなどの体験談からなのですが、、

やはりどんなに材料のスペックが高くても、、値段が高いギターでも、
設計がどこかでずれているようなギターはいずれ何か物足りないと感じて、手放されていく方が多いように思います。。




もちろん、ギター選びには音以外の要素も関係いたしますね。


弾きやすさや、各スタイルに合ったギター、レコーディング用、ライブ用、ピックアップをつけるかどうか、ルックスなどなど、様々な要素もギター選びに影響します。


料理と同じで、”好みの差”、”好みの音”というのはありますね。。



でも、スペックや定価に惑わされず、本当に感動できる、圧倒的に音楽的に響くギターというのはどれくらいあるのでしょうか。。


ピアノやバイオリンなどの至高の楽器と同様、やはりアコースティックギターにもそのレベルの楽器が存在しているように思います。

好みの差、というよりはレベルの差 を感じるギターです。。




一方、、こちらは信州そばです。地元の友人にお勧めのお店に連れって行っていただきました。




素材をシンプルに活かしたものですが、これも大変美味しいのです。

ギブソンのように、比較的安い素材シンプルな設計によって独自の味(音)で魅力を感じさせるメーカーもありますね。



いずれにしろ、戦前から素材と設計を融合させた素晴らしい楽器を作っていたマーチン社の凄さを改めて感じました。。





余談ですが、試奏中部屋を移動するのに、

右手に000-45  1942   左手に 000-42 1939 を持ちました。

ふと、今両手に持っているものの価値にゾックといたしました。ビンテージで塗装も焼けとても軽いギターだったのですが、ギター好きにはあまりにも重みを感じてしまう二本でした。。



”この二本でいくらだろう。。” と思ってしまうのは貧乏人の性ですね。。




さて、この試奏レポートにはまだ続きがあります。

今回は、000 と OM が中心でしたが、次回はドレッドノート(D)が登場します。

これもマーチン 社の偉大な発明です。



冒頭にも少し出てきましたが、戦前のD-28 D-18 です。
今となってはこの形がアコースティックギターの形として広く認識されています。

この14フレットのドレッドノートもマーチン社が1934年に開発したものですね。

世界中のドレッドノートのお手本になったこの2本のレポートを予定しています。

ハカランダとホンジュラスマホガニー、、最高峰の28 18 対決です。



加えて、戦前ではありませんが、1968 のD-45も登場します。


こちらもマーチンファンの間で、圧倒的な人気を誇るギターですね。




すでに博物館級の評価を誇ります。。市場価格は一部の戦前のギターより価値が高い時もあります。。この時代特有の、素晴らしさがありますね。。ピアノを感じさせるギターです。



さらに、マーチンとは別路線の現代の名匠のギターも登場します。。

ある面ではマーチンにも敵わない独自の魅力があるでしょうか。。



こちらは現代最高の製作家と呼ばれるSOMOGYIです。



こちらのギターは、、。。息を飲むデザインです。。


その他、最近評価の高い越前ギターのカスタム品なども弾かせていただきました。

次回の投稿もどうぞご期待ください!







最近は月に一回の投稿を目標に掲げておりますが、次回はもう少し早くアップできればと思っています。(あくまで目標です。。)

ギターに関するご質問でお待たせしている方申し訳ありません!
順番にお答えいたしますので、もうしばらくお待ちいただけましたら幸いです。必ずお返事いたしますね!

引き続き、レッスンや調整、録音や、各種メーカーのお手伝いなどギターに関わりながら忙しい日々を送っております。

間も無く、ブログ読者のかたがカスタムオーダーしたギターのいくつかが到着予定ですのでそちらもレポートしたいと思っております。

また時々覗いてくださいね!






(このブログの写真や、文章は無断掲載なさらないようお願いいたします)

教室ホームページ:
https://sites.google.com/site/nacosticguitarschool/

教室ブログ(ギター、機材レポート):http://acouguist.blogspot.com

キューズランドミュージックスクール講師ページ:
http://www.qsland.jp/school/guitar/index.html#private_agfinger

















1 件のコメント:

  1. なんと、、、、、博物館レベルが残っているものですか。。。。ほえ~~~~~

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