アコースティックギターファンにとって、いつの時代もMARTIN は憧れのギターです。
そんなマーチンファンの間で近年圧倒的な人気を誇るのが、ビンテージ仕様のギターですね。
1930年代〜40年台前期にかけてのMARTIN社は、
職人の”技術”も、
使用することができた”木材”も、
ギターの”設計”も
最高潮に達していたと言われています。
それでその時代のギターたちは
戦前(プリウォー)、戦中(ウォータイム)と呼ばれ、
総称として ”黄金時代”と呼ばれています。
黄金時代= GOLDEN ERA (ゴールデンエラ)ですね!
何を隠そう私もこの時代の設計のギターの大ファンなのです。。
見た目も渋くて最高なのですが、、とりわけアコギファンの心を掴んで離さないのは、その魅力的な(魅惑的な)唯一無二の音色です。
この時代の設計、音があまりに魅力的なので、この時代を意識したギター達が本当にたくさんのブランドによって製作されています。
例えば、
有名メーカー製ですと、”コリングス”や”サンタクルーズ”などはマーチンのビンテージを意識した作りのものが多いですね。特にコリングスは戦前のマーチンに独自の技術を昇華して高い評価を受けたブランドと言われています。
またルシアーギターでも、戦前マーチンを意識したギターがたくさんあります。”メリル”や”ジュリアスボージャス”などは特に評価が高いですね。
個人的には、グレーベンさんや、NGCのギター が大好きです。
お二人とも有名なビンテージマーチンのリペアショップ グルーンギターのリペアマンから出発された方ですね。
そして、もちろん本家マーチンもビンテージ仕様のギターを製作しています。
一般人にも身近なモデルとしてHD-28V OM-28V 000-28ECがあります。市場でも常に根強い人気がありますね!
製作本数もかなり多いので、お持ちの方も多いかもしれません。ビンテージの音を気軽に楽しめます。
さらにビンテージにちかいモデルとしてGE シリーズがあります。
黄金時代= GOLDEN ERA 略してGE と名が付くモデルです。
設計に加えて、木材も当時をできるだけ再現しています。
(ハカランダの使用が近年難しくなっているので、GEの代替版としてマーキスと名がつくモデルも発売されています。ハカランダの代わりにインドローズやマダカスカルローズを使用したモデルです。)
GEまできますと、素晴らしいクオリティーですね。。押尾コータローさんはD28のGEを使用しておられます。
でもさらに上とマーチン社が唱っているモデルがあります。
それはオーセンティック(=本物)と名がつくモデルです。
こちらは、木材もさることながら、製法、詳細デザインまで、かなり細かく当時を再現したものです。(ロッド、塗装、デザインなどなど)
マニアの間ではマーチン社が作る究極のレプリカモデルと呼ばれていますね。
このようにマーチン本家をはじめ、様々なメーカー、製作家がマーチンのゴールデンエラ期のギターをコピーしています。
それだけ、多くのギターファンがこの設計のギターが持つ魅力に取り憑かれているのだと思います。。
中には、100万を超える物も多くありますね。。
究極のギターとして知られているものもたくさんありますね。。
マーチンもオーセンティック(=”本物”)と名の付くギターを製作しています。
でも、厳密に言いますと、、これらのギターはやはり”本物”ではないともいえます。。
やはりレプリカモデルなのですね。。
誤解の無いようにですが、、これらのギターたちは本当に素晴らしいギターたちです。
製作技術も材料も素晴らしいギターたちがたくさんあります。
また独自のアイディアなどを取り入れて、マーチンにない音色を作っている方もおられます。確かに究極と呼べる魅力のあるギターもあります。
それに実際、”本物”のビンテージギターは数も少なく、価値も大変上がっています。
誰もが使える(あるいは買える)ギターではありません。
そう考えると私を含めた一般人には、現実的にはこれらのレプリカの最高峰のギターがビンテージ系の設計では究極なのだと思います。
実際、、オリジナルのビンテージは買えるどころか、お目にかかれることすらほとんどありません。。
私にとっても夢のまた夢のギターたちでした。
「いつかマーチンミュージアムに行けば、いろいろ見られるのだろうか?
でも、マーチンのディラーでもないし弾くことなんてできないだろうな」
そんなふうに思いながら、ビンテージギター特集など記事を、羨ましそうにニヤニヤしながら見ることぐらいでした。
そんないつものようにニヤニヤしてある日、とある方からメールをいただきました。。
そして、、
ついに、、
私にもそんなミュージアム級のギターを弾かせていただく機会が訪れたのです。。
写真のギターは
左
000-42 1939
中央
000-45 1942
右
OM-28 1933
です。。。正真正銘、、ゴールデンエラ期の”本物”です。。無数のビンテージコピーのお手本になった実物です。。
このクラスのギターは一本だけでも大変貴重ですね。。
でもなんと28、42、45が揃っています。。
000-42に関しては、エリッククラプトンがアンプラグドで使ったのと同じ年です。。
こちらの写真はどうでしょうか?
マーチンファンですと、指板のインレイや、ブリッジピンの色でモデルがわかるかもしれません。
現在のマーチン社でもよく見るデザインですね。
全体のデザインやインレイを見ますと、、
左が HD-28V と 右が D18V でしょうか??
いえいえ
D-28GE と D-18GEでしょうか??
いえ、こちらも本物です。。
左がD-28 1938
右がD-18 1938 です。
世界中のマーチンファンが目にしている、このデザインのギターのお手本となったオリジナルですね。。
これらの素晴らしいギターたちは、長野県某所のとあるギター好きの方の大切なコレクションの一部です。
恐縮ながら私のブログをご覧くださっていたのです。
そして”ぜひうちの眠れるギターを弾いて感想を聞かせてください”とのご連絡をいただいて、今回の試奏が実現いたしました。
本当に、貴重な機会を心より感謝しております!
そしてさらにご親切にも、これらのギターをブログにアップする了解もいただきました。。。本当に本当にありがとうございます。。
今文章を書いている時も思い出して、少し鼻息が荒くなっておりますが、、丁寧にご紹介したいと思います。
今回は第一弾として弾かせていただいたギターの中から、000 OM を中心に当日の様子をレポートしたいと思います。
本当に圧巻のラインアップでした。。
28 42 45 の弾き比べを、まさか本物のビンテージできる日が来るとは思っても見ませんでした。。
そして、後ほど詳しく取り上げますが、これらのギターのコンディションも圧巻だったのです。。
一本ずつ参りましょう!まずは写真右のギターです。
MARTIN OM-28 1933 です。
OM-28 は、とりわけファンが多いモデルですね!
私も大好きなモデルです。。スモールボディーにロングスケールの張りもあり、バランスの良さはピカイチです。何を弾いても合ってしまう使いやすさがあります。
ソロギタリストにも人気のあるサイズですね。
(昔のブログでOMを特集したこともありました。OMの特集記事はこちら)
この今では当たり前になっているOMも、マーチン社が発明したものです。
1929年に開発され実際にカタログに掲載されたのは、1930年です。
その後、1933年に生産を終了し、14フレットの000へと移行していきました。
このわずか数年に制作されたオリジナルのOMはとりわけ貴重とされています。
製作本数が極めて少ないのです。。このギターはその最終年のギターです。
世界中に数あるOMギターの元祖ともいえるギターですね。。
OMの元祖としても貴重ですがこのギターは、
14フレットジョイントギターの最初期モデルとしての歴史的な価値も非常に高いと思います。。
現在アコースティックギターの世界では当たり前とされている14フレットジョイントですが、これもマーチン社の発明です。
1929年初の14フレットモデルとして登場したのがこの OM です。
そしてこのOMの良さを受けて、1934以降 ドレッドノート(D)が14フレットに、そしてOOOも14フレットになって行ったといわれています。
それが世界中のギターの常識になったのですね。。
このOM-28 1933 は アコースティックギターの歴史の転換点につくられたこの最初期の14フレットジョイントギターとして、、まさに博物館のギターだと感じました。。
ではこのギターの写真をさらにみてみましょう。
まずトップです。
これから登場するギターに共通するのですが、やはりこの時代のギターがすごいのは材料のグレードです。。
トップはアディロンダックスプルースですが、今では考えられない目の詰まり方です。
あまりにすごくて、一見通常のシトカスプルースと見間違うほどですね。。
デザインもヘリンボーン、ダイヤモンドインレイなど、現在のビンテージコピーのギターでもよく見るものですね。
そしてサイドバックはもちろん!
柾目のハカランダです。。(ちょっとブレ気味で申し訳ありません。。)
でもこれぞ戦前と言えるすごいハカランダですね。この明るい色合いがこの時代特有です。
コアなマーチンファンでなくても、、どこかで"見覚え"がおありでしょうか。。
こちらもノンクラック、オリジナル塗装のモンスターグレードでした。
その結果もあり、本来の音を確認できたのは、本当に嬉しかったです。。
やはりこのコンディションの000-42は世界的にもあまり無いのではないかなと感じました。。
下の写真をご覧ください。。
トップのアディロンのグレードもやはりすごいですね。。現在では考えられない密度のアディロンです。
ビンテージのアバロンの存在感もすごいです。。新品には出せない、不思議な存在感があります。。でも、30年代のギターとは思えないコンディションです。。
ヘッドのロゴは、横ロゴですね。いわゆるビンテージスタイルのロゴです。
化粧板はハカランダです。
そしてサイドバックは、、
こちらも、圧巻の柾目のハカランダです。
この色合いがやはり30年台特有のように感じます。。オリジナルの塗装が完全に引いて、ビンテージギターの独自の存在感を作り出していますね。。
この時代のハカランダの音を聞きますと、、
やはりどんな代替材も、このクラスのハカランダにはやはり敵わないように思います。
圧倒的なレンジと低音の厚み、音量、高音の煌びやかさ、、そして加工もしやすく、そして息を飲むほど美しい、、
まさにアコースティックギターの理想の材だと思いました。
しかも新品ではない、抜けきったビンテージの音です。。
少し余談なのですが、、アディロンやハカランダに気を取られがちになるのですが、、隠れた名脇役がネックです。写真だと産地は伝わらないのですが、、笑
この時代ですとかなりグレードの良いワンピースのホンジュラスマホガニーネックだと思います。
本物のマホガニーは実際にはホンジュラスかキューバンマホガニーといわれています。それ以外のマホガニーと名のつくものは実際には、姉妹種のようなものかもしれません。。
現在でも一般的なレベルのギターでこのクラスのワンピースネックを使うのはまずありませんね。一部の超高級ルシアーのみだと思います。。
(とあるアメリカのマーチン系のルシアーさんのキューバンマホガニーネックのギターを弾いたことがありますが、これは圧巻でした。。)
この時代のネックはかなり良いものを使用していると思います。
実際にネックをタップするだけで、ボディー全体が深く響くほどのすごい振動でした。
それもあり、実際に演奏してみますと。ネック全体も深く振動し、一体となってギターが3D音響のように響くのです。。
高級スピーカーの持つ深いレンジ感のようなものを感じました。
ネックを3ピース5ピースなど強固に作ったり、あるいはボルトジョイントなどにしているブランドもありますね。
状態も安定しメンテナンス面でもメリットがありますね。でもその反面、音が硬くなったり、「パリッ」としすぎる傾向があるように思います。
最初はわかりやすいので「おっ」と思うのですが、ワンピースマホガニーネックの深いギターらしい音色の方が私はやはり好きなのです。。
特にマーチン系の音ですと、やはりワンピースマホガニーのグレードの良いネックは欠かせないように思いました。
このクラスのワンピースネックで、乾燥しきったものだと安定し音も素晴らしいですね。。
しかもこの1939年のネックの形状はは音も良いといわれ、最近のカスタムでもこの時代のネックの形状が再現されています。
とにかく全てにおいて妥協がない時代のギターのように思いました。
この音はもちろん、先ほどのエリッククラプトンのアンプラグドで聞けますね。
さらに最近では、ギタリストの小倉博和さんが同じ1939の000-42を購入されたことが話題になりました。
このギターを特集したアルバムも発売されています。
かなり近いギターもマーチン社から発売されています。
現在多くのクラプトンモデルが出ていますが、多種多様なモデルがあり、全てがアンプラグドのギターを再現したものではありません。
個人的なおすすめいたしますのは
MARTIN 000-42 オーセンティック1939 です。
クラプトンモデルという名はついていないのですが、まさにこの1939の000-42 を細部まで忠実に再現したものです。
大変貴重なギターですが、恐れ多くも許可をいただき、トップやバックを叩いてタップトーンなどを詳しく見させていただきました。
こちらは現代最高の製作家と呼ばれるSOMOGYIです。
最近は月に一回の投稿を目標に掲げておりますが、次回はもう少し早くアップできればと思っています。(あくまで目標です。。)
https://sites.google.com/site/nacosticguitarschool/
教室ブログ(ギター、機材レポート):http://acouguist.blogspot.com
キューズランドミュージックスクール講師ページ:
http://www.qsland.jp/school/guitar/index.html#private_agfinger
なんと、、、、、博物館レベルが残っているものですか。。。。ほえ~~~~~
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