2022年4月25日月曜日

・「良いアコギの話」〜その60 シェラック&艶消しラッカー塗装のエアーズ OM08A ノンカッタウェイモデル 塗装についても少し書いてみました。

この春のエアーズギターの入荷で、ブログ読者の方がオーダーされたOM08A カスタムが届きました。




ノンカッタウェイモデルです。ハイポジションやカポを多用するフィンガースタイルですとカッタウェイありが良いという方も多いと思います。

一方より音にこだわる方でしたら、ノンカッタウェイがおすすめです。




トップはアディロンダックスプルースです。

ノンベイクドです。白いアディロンですね。


サイドバックはベトナムローズウッドです。




僅かに入っているサップがいいですね!





トップの白とのコントラストもとても綺麗ですね!





ひきやすさやデザインは抜きにして、音だけにこだわりますと、個人的にはやはりノンカッタウェイの方がわずかに鳴りの良さを感じます。

スモールサイズになればなるほど、その差が大きくなる印象です。



(フォルヒでもOM や G まではカッタウェイありとなしの差がわかりました。S(スーパージャンボ)になりますとほとんどわからないとのことで、日本向けモデルにはSのノンカッタウェイはありませんでした。)



若い頃はデザイン的にもカッタウェイが好きだったのですが、最近はどちらかというとノンカッタウェイのデザインが好きになりました。特にOMのフォルムが美しいのですね。


”ハイポジションはあまり引かないのでとにかく音にこだわりたい!”という方の場合はノンカッタウェイがおすすめです。値段も僅かに安くなりますね笑



そして音にこだわる方に特にお勧めしたいエアーズのオプションがあります。


それは シェラック下地&艶消しラッカー 塗装です。



もう少しギターに寄ってみましょう。艶消しですが、サテンのような質感ではありません。

しっかりと塗装が吹きかけられています。

(クリックしていただくとより高解像度になります)


生で見た時のの質感はもっと綺麗です。

手触りもとてもいいですね。




エアーズで一般的なモデルに採用されているのは、PU(ポリウレタン)塗装の艶ありです。

こちらはOM08A のベイクドアディロンモデルです。

しっかりとした艶がありますね。


皆様ご存知の通り塗装は、表面の保護という重要な意味合いがあります。

汚れや手汗からもギターを保護しますね。

とはいえ、木材の表面に一枚被せるのでやはり振動は妨げるということになります。


プロの使う道具として、ライブやレコーディングなどの環境でまた照明などからも守るなどと考えると比較的強いとされるPU塗装には一定のメリットがあります。

テイラーやラリビー、フォルヒなどはPU加工が採用されていますね。
コリングスは初期はラッカーでしたが、現在はラッカー下地にポリウレタンと記憶しています。

レコーディングやライブ現場でタフに使えるギターとしては、ポリウレタン塗装はとてもいいと思います。

温度変化や湿度にも、比較的強い塗装です。


ではアコースティックの王道マーチンはどうでしょうか??


こちらは近年製のJ40です。

先ほど同じ艶ありに見えますが、これは「ラッカー塗装」です。

ラッカーの艶ありですね。

マーチンは上位モデルにはラッカー塗装を採用しています。




ラッカーはPUに比べると塗装としては幾らか弱いです。

熱に弱く、手汗や経年などによってベタついてしまうこともありますね。。

またやはり経年と共に割れやすい塗装ではあります。。

でも、やはりサウンド的にはラッカーが素晴らしいと思います。

マーチンスタイルを踏襲している各種メーカーもラッカーを採用していますね。

ラッカーもやはり新品時は幾らか音が固いです。

これが15〜20年程度経ってきますと塗装が染み込んで木と一体化してきます。
こうなると新品では出せない音になるのです。。

このラッカーがビンテージの音になったギターが、、本当にすごいんです。。

こちらは以前私が使っていた2000年台前半のMARTIN OM-28V です。

塗装の引きを写真に写すのは難しいのですが、、




先ほどの近年製のマーチンに比べて蛍光灯の光を反射していないのがわかるでしょうか。

こちらはさらに年式が古いOOO-28ec です。



普通艶あり塗装ですと、正面から撮影すると鏡のように周りのものが映り込むのですが、写り込みがぼやけていますね。


つまり時間の経過とともに、艶消しに近い状態になっていくのです。。


そしてこれが本物のビンテージになりますと、、



完全に塗装が引いています。

こちらは以前ブログでレポートさせていただいた、D28 の1938年製です。当時の塗装のままで木のクラックもないという信じられないコンディションのギターでした。

ちなみにマーチンマニアの世界では、ラッカー塗装が引いて塗装の割れが綺麗に入ったものを
”ウェザーチェック”といいます。

これはオリジナルのラッカーが引いた証として高く評価されています。

こちらは000−45カスタムのトップです。

縦に塗装にヒビが入っているのがお分かりいただけるでしょうか。




新品ですと塗装にヒビが入ると価値は下がりますが、ある年代を超えたビンテージになりますと、ウェザーチェックがある方が良いとされています。

良い音のする楽器の一つの勲章なのですね。見た目的にも貫禄があります。

もちろんあまりにヒビが入ったり、割れが木部までにいくと再塗装(オーバーラッカー)することがあります。

強度的には強くなり、見た目も良くなります。

ただサウンド的には正直一度リセットされるイメージです。

ビンテージでも上手にオーバーラッカーしてあるギターはもちろん良いサウンドですが、やはり本来の音に比べると、幾らか音が硬くなる印象です。

実際ビンテージでもリーズナブルなギターは再塗装されていることが多いです。


オリジナルのラッカーのまま、ビンテージになった音はすごいですね。。


さてこのような塗装を新品で再現するのは難しいのでしょうか。




MARTIN に「オーセンティック」 というモデルがあります。ビンテージの完全コピーを歌っているモデルです。

こちらはMARTIN OM28 オーセンティック1931 というモデルです。

塗装をみますと、、新品時からかなり引いているのです。


スペック上では「ビンテージグロス」 という塗装になります。

サウンドや質感からしますとラッカーの艶消しと思われます。このサウンドは新品ながら音が抜けていてかなり良い印象でした。




塗装の配合率などは各社詳細は企業秘密のところが多いので、詳細は不明ですが、出てくるサウンドは明らかに他の塗装より音が抜けているのです。


では、エアーズの場合これに近い塗装はあるでしょうか??


一度エアーズの塗装を見てましょう。





エアーズではシェラックの下地に艶消しラッカーがそれに近い塗装です。

艶ありモデルに比べると、明らかに新品時の鳴りや抜けは良いです。
特に倍音がより豊かに出る印象です。

そしてこの塗装のもう一つのメリットがあります。




この塗装は艶ありに比べて、より木目の濃淡が美しくなるのです。

木目が引き立ち、立体感が出ます。



実際に手に取ってみると、本当に美しいのです。


この塗装は正直なところ、強度的にはPU艶ありに比べて幾らか劣ると思います。

湿度の変化にも弱いですし、打コンなどはつきやすいと思います。


いつまでも綺麗なギターでいたい、あるいはステージで使いたいという方にはPUが良い選択肢だとと思います。


(ちなみにPU塗装はラッカーのようにビンテージにならないかというと、そうでもありません。

ビンテージのラリビーやテイラーもちゃんと音が抜けています。長年弾いて音の熟成を楽しむのも良いですね。ただラッカーのビンテージの音はやはり別格です。)


でももしあなたが、

多少の傷がついていったとしても、楽器として良い音が欲しいと思うなら
新品時から音の抜けた湧き出るようなサウンドが欲しいなら
そして木目の濃淡をより楽しみたいようでしたら


ぜひこのシェラック下地&艶消しラッカーをお勧めします。




ビンテージのマーチンのサウンドを聞くとき、音があまりに素晴らしくて、見た目のボロボロなんて誰も気にしないと思います。

むしろその見た目に魅力を感じる方がほとんどです。

ビンテージギターには長年使われた熟成された楽器の持つ存在感がありますね。

私はコレクターではなくてプレイヤーですので、やはり音に一番拘りたいのでした。


デザインや強度も確かにオーダにおいて重要な要素です。
それでも、楽器はやはり音を最優先にして選択すると、後悔しないギターになるように思いました。







ちなみに今回からエアーズの純正のケースが新しくなりました。




丈夫で軽いケースです。ほのかに青みがかっていて綺麗な色合いです。

持ち運びにも軽いのはいいですね!









このギターは宮城県のAさんがオーダーしてくださいました。
なんと昨年浜松まで泊まりがけでエアーズの試奏に来てくださいました。

オーダーの本気度が伝わりました。

昨年はコロナ渦でエアーズの工場のストップがありかなりお待たせしてしまいました。
少しずつ元に戻りつつあるようです。


先日到着後、ご丁寧なメールをいただきました。その一部です。


丹羽様


昨日今日と弾きましたが,待った甲斐があったというものです笑

見た目は頭の中で描いていたものの完全に上位互換で,非常に良かったです.
眺めてはニヤニヤしています.
特に,ウッドのロゼッタとトップに入れたメイプルのパーフリングが想像以上に良かったです.

音は,開けてすぐの昨日は少しあれ?という感じで,
こんなもんだったかな,という感じで,そこまでの感動はなかったです.
期待しすぎて高揚していたかもしれないです笑
一晩あけて今日は少し落ち着いて弾きましたが,
じわじわと良くなってきた感じがします.
部屋に馴染んだのでしょうかね.

以前Ayers事務所で引かせていただいた時の,
とろける和音と伸びのあるメロディを奏でるイメージがそのまま家にきた感じです.
かつ,OM特有だと思いますが,イコライジングがベストな感じです.

また,今まで使ってきたドレッドタイプと比べて驚いたのが,圧倒的に低音が強いことです.
どこで耳にしたかわかりませんが,
倍音が豊かだと低音が,低音が豊かだと高音域がよく聞こえるようになる,
という説明を聞いたことがありますが,
倍音が低音の説得力にも貢献しているのかな,とふと思いました.

極限まで追い込んでいただいたセッティングのおかげか,弾きにくさが全くないです.
さも数年間弾いてきたかのような弾きやすさです.
新岡さん恐るべしです.

一点だけ,後悔している点があるとすると,
トップだけに入れたメイプルのパーフリングが想像以上に良かったので,
サイドにも入れれば良かったかな,ということくらいですね.
弾くときに抱えると目に入るのはサイドのバインディングなので,
そこだけは入れても良かったかな,という感じです.
まあ,音には関係ないんでそこまでの後悔ではありませんが.

長く書いてしまいましたが,この度は本当にお世話になりました.
ご自宅に押しかけ,非常に丁寧にギターの知識をお教えいただいた時から,1年以上がたったのですね.
長いようで短いようでやっぱり長かったです笑
届くまでの焦れる気持ちを度々ぶつけてしまったにも関わらず毎回丁寧に対応いただきました.
本当にありがとうございました.


宮城県 A 




このようなメールをいただくと、私のまだまだの知識でもお役に立つことができてとても嬉しいですね。

ぜひ長きにわたる良い相棒になることを願っております。


さて最後に最近の近況です。

先日、妻との結婚記念日に少し足を伸ばして山梨県の県立まきば公園 というところに行ってまいりました。浜松からですと2時間半ほどでしょうか。


天気にも恵まれました。





標高1200メートルほどの八ヶ岳高原にある無料の公園です。

そして八ヶ岳の反対側には、、



どーんと富士山です。360度高原と美しい山並みが広がる素晴らしい公園でした。

羊やヤギ、ポニーたちが放し飼いになっており、触れ合うことができました。






ヤギさんはカメラを向けてもずっとこちらを向いています。








スイスのような素晴らしい場所でした。

こんな場所でアイリッシュなどを弾いたら気持ちが良いでしょうね。ギターを持ってきたかったですね。


もし東海や関東近郊の方はぜひお勧めです!

さて次回予告ですが、5月のハンドクラフトギターフェスに向けてエアーズも大量入荷する予定です。

またエアーズの新岡さんが立ち上げたOTSラボ(倍音研究所)プロデュースの手工ギターやOTSの最新作OTS2.0もレポート予定です。



マーチンの45のカスタムなどは誰もが手にできるギターではありませんが、もう少しリーズナブルでこの種のサウンドを楽しめる機会が増えると思います。

引き続きエアーズやフォルヒのオーダーのご相談も受け付けております。

最近はコロナ禍の入荷不足もあり入荷後すぐに各種楽器店に発送され、在庫品が残らない状態が続いております。

最新モデルなどにご興味ある方は、是非ご連絡ください。

もちろん、その他のギターに関する相談などもどうぞ引き続き遠慮なくお尋ねくださいね。











 

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