今回アコースティックギターの音の評価の点で、かなりこだわりたい!
・・でも意外と見過ごされているように感じる
「レスポンス」
にスポットを当てたいと思います。
レスポンス=「反応」が良いかどうか です。
ギターの説明文の中で「レスポンスが良い」と書かれることがあります。
でも意外とレスポンスって一聴しただけでは分かりにくい部分がありますね。。いくらか漠然としているかもしれません。
今回の記事で少し掘り下げてみたいと思っております。
みなさんがお持ちのギターのレスポンスはいかがでしょうか??
私の中では、アコギにおけるレスポンスには大きく2種類あります。
1 弦を弾いた瞬間 音が出るか?
音の初速 とも言えるかもしれません。弦を弾いた瞬間に音が出るということです。
実は、、音の初速が早いギター。。意外と少ないのです。
例えばどの弦でも良いですが、タイトに「パーン」と弾いてみてください。
…何度か何度か弾いた後の音のが出るスピードを確かめてください。
レスポンスの良いギターは弾いて間髪なく「パーン」音が出ます。
一方かなりのギターで、わずかコンマ何秒かですが「・・ 」と僅かな休止を感じる場合もあります。本当に僅かですが、、この僅かが大きな差なのです。
実音量や鳴りが豊かな高級ギターでも、弾いてから音が少し遅れて聞こえるギターが実は…かなり多いように感じています。素材も高級でなのですが。。
スローなソロギターならあまり気にならないかもしれません。
でもレスポンスはグルーブやリズミックな音楽の際、かなり重要になります。
弾きたいタイミングで「スパッ!」と音が出るかどうかです。演奏者のノリにも影響します。
グルーブはタイトなリズムとそこからのズレで生じますね。
あるいは、バンドの中でギターを弾くときにもたつくかもしれません。。ブルーグラスなどでは特にそうですね。
これは乗用車とF1マシーンのような違いかもしれません。
より早い加速が出るギターの方が、乗りこなすのは大変です。
でもコントロールできればしっかりとしたリズムのオンオフを作れます。
超一流のギタリスト、特にリズムが素晴らしいギタリストの多くはレスポンスの早いギターを使っておられるように思います。
このレスポンス、、私の理解では、
主に素材ではなく、アコースティックギターの設計からくるものです。
もちろん幾らか素材によって音の返りの違いはありますが、レスポンスが早いメーカーのギターではどの材料でもレスポンスは早いです。
基本的にアメリカで評価を得ているギターブランドの多くはレスポンスは素晴らしいです。
やはりカントリーやブルースなどの音楽の下地があって、その音楽に必要な楽器として設計されていったのだと推察します。
レスポンスが素晴らしいのはまずはなんと言っても「MARTIN」ですね!
マーチンの大定番ライン 28 と 18はどちらも素晴らしいレスポンスです。
弾いてすぐに音が変わる圧倒的なレスポンスです。ブルーグラスではこの種のギターしか使われないのもうなづけます。。
28系の定番ギターを見てみましょう。
こちらはOM-28v 2005年製です。
私も大好きなモデルです。
レスポンスは弾き手のタッチにどれくらいの速さで音が反応するかですので、
動画では本当の意味では分かりません。
それでも弾き手の右手のタッチに注目しながら音を聞くとレスポンスをイメージできます。
こちらは最近インスタで見つけたOM-28V(2008)の動画です。
もちろんサイズが大きくなってもレスポンスは素晴らしいです。
こちらはD-28マーキス 2008年製です。
一般的に ボディーの胴厚が薄い方がレスポンスが早いと言われます。
確かにその通りですが、ボディーが薄くてもレスポンスが遅いギターはかなりあります。
つまりこのレスポンスはそれ以外の設計からくるもの、、ということになりますね。
ちなみに同じようにサイドバックがメイプルなどの軽めの素材だと、レスポンスが早いように感じる場合もあります。
ただこれもやはりメイプルでも遅いギターはたくさんあります。・
一方でD-28のようにローズでドレッドノートのように胴圧の厚るギターでも、マーチンのレスポンスは素晴らしいです。
ちなみ余談ですが、同じD-28でもノンスキャロップだとさらに、レスポンスが早いように感じます。
マイケルヘッジスがノンスキャロップのD-28を使用したのもうなづけますね。
1970年代初期のD-28はトップが2.2mm近くの薄さものもあり、その時代の音は特に良いように感じています。
ソロギターでもレスポンスの良さは弾き手の感情がダイレクトに伝わります。弾いていて音楽にのめり込めるギターですね。
ちなみにアメリカンギターの大定番 テイラー ギブソンもレスポンスは素晴らしいですね。
ヨーロッパでレスポンスが素晴らしいのはローデンです。
F32C 2018年のモデルだったと記憶しています。
ローデンは鳴り方はかなりユニークです。ネックが頑丈な分あまり振動しないので、少し鳴り方が私には硬く感じます。とはいえ、レスポンスとハーモニーは素晴らしいですね。。
いくらか硬めのサウンドが好きな方にはおすすめできます。私はもしワンピースネックのローデンがあったら欲しいですね。
では手工ギターではどうでしょうか??
マーチン系でマーチンの音を本当に熟知しておられる方のギターは素晴らしいです。。
マーチン系のルシアーで私が特に感動したのは
ナッシュビルギターカンパニー(NGC)
というギターです。
このギターはOM42タイプの2000年製のギターです。このギターのレスポンスは圧巻でした。。弾く前から音が出るような、、そんな感覚です。
しかもユニゾンからくる倍音ではなく、5度にトップバックを調律した、いわゆる40番代の倍音が入っていました。
そしてもちろんこの方のギターも圧巻のレスポンスです。。
アーヴィン ソモジさんです。
ソロギター界では手工ギターの頂点と言われるギターですね。
こちらは以前弾かせていただいたオール単板時代のモデルです。2000年ごろのものと記憶しています。
ソモジさん系のルシアーはたくさんおられます。
でもやはりご本人製作のレスポンスやハーモニーは素晴らしいです。。
ユニゾン系の下方向の倍音が好きな方にはいいですね。上に上がる倍音はいくらか少なめです。
少し余談になるのですが、、
職業柄、ギターについての評価をよく尋ねられることがあります。
「このギターいい音ですよね!」と言われる方には、
せっかく喜んで気に入っておられるので、それをあえて否定することはお伝えしたくないと思っています。
料理の味付けと同じで、ギターの音もお好みもありますね。
でももし「このギターの音、本音ではどうですか??」とお尋ねいただければ、私なりに感じていることを率直にお伝えするようにしています。
その種の音なら何十万or何百万出さなくても、低価格帯のギターでも十分かもしれません。という場合もあります。
一方もし本当に良いギターと出逢いたいのであれば、
せっかくなら倍音やハーモニーやレスポンスなどにこだわりたいものです。
さてレスポンスに話を戻しましょう。
レスポンスにこだわりたいのは、
1 音の初速 ともう一つあります。
2 音量のつまみが細かい
右手のタッチに合わせて、より細かく音量がコントロールできるギターということです。
超弱音のピアニッシモ〜大音量のフォルテッシモまで音量のつまみがかなり細かいイメージです。
車に例えると7速〜8速くらいに細かく分かれています。
自由に音量表現することができます。
M-Factory さんのプリアンプがF1マシーンに例えられるのも頷けます。。
一方、、音量のレスポンスがイマイチなギターは、弱 中 大 の3段階くらいです。
一般に音がなるギター = 音量が大きい ギターが良いとされがちですが、
良いギターには弾き手の感情に応える音量のレスポンスを持っています。
小さい音から〜大きい音までタッチに忠実に反応するギターですね。
このようなレスポンスを実現するには、1の設計が最低条件に下記の要素が関わってくると思います。
①音のエイジング(ビンテージ化)
新品から15〜20年ほど経ちますと、塗装が引いて木と一体化していきます。ラッカー塗装では顕著です。接着剤も完全に木と一体化し振動を妨げるものがなくなります。
マーチン博士のマイクロングワースが「25年たったマーチンには何も敵わない」と言っています。
ビンテージになって調整の良いのマーチンの音は素晴らしいです。
これは戦前のどちらも1938年のD-28とD-18です。まさにドリームギターですね。。
塗装が完全にひいています。
近年物のビンテージコピーでも20年近く経つと、音が一段と抜けて素晴らしくなります。
特に個人的には2004年以前のマホガニーネック期のサウンドが好きです。
こちらはD18GE(2003年)です。
マーチンも25年近く経つとさらに格別のレスポンスになります。
ちなみにヘッドの化粧板はハカランダです。
こちらはD-18GE(2003)とHD-28V(2015)を比較した動画です。
同じ戦前設計のビンテージコピーです。
素材の差やピックアップのあるなしなどの差はありますが、
明らかに2003年製の一本めのギターの方がレスポンスが早いのがわかるでしょうか??
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